しまね四季の便り−しまね歳時記−

乙女峠まつり

鹿足郡津和野町

 萌えるような新緑に包まれた小道を、聖母マリア像を中心にした長い行列がゆく。少女たちはみな白いヴェール、白いドレス。鐘の合図で手にした花びらをまき、ロザリオに祈りを捧げる。山陰の小京都といわれる美しいまち津和野で毎年5月3日に行われる「乙女峠まつり」は、カトリック信者の厳粛な巡礼であり、祈りのまつりである。

 禁制の宗教を信じ江戸時代を生き抜いてきた長崎浦上の隠れキリシタンと呼ばれた人々は、明治新政府により強く改宗を迫られ弾圧を受け、各地へと配流された。津和野もそのひとつである。津和野で命をおとした多数の殉教者を追悼するために建てられたのが乙女峠記念聖堂、マリア聖堂である。

 津和野カトリック教会を出発した行列は、先人の苦難を偲びつつ、神聖な祈りとともに聖歌を歌い、津和野駅の裏手にある小高い山の中腹にあるマリア聖堂をめざして歩みをすすめる。そこはカトリックの伝えによれば、殉教の際に聖母マリアが現れたという奇跡の地でもある。乙女峠につくと厳かに野外ミサが開かれ、信仰への誓いをあらためて胸に刻むのだという。

 この乙女峠まつりが終わると、津和野の町にまぶしい初夏がやってくる。