仁多郡森林組合の求人情報
豊かな自然と歴史が育んだ森林を守る
来たれ、100年先の未来を見据えた「護る仕事」の仲間たち
林業(島根県 仁多郡 奥出雲町)


島根県東部の南端にある、懐深く、雄大な自然に抱かれるように広がる盆地。そこに広がる奥出雲町は、清らかな水と空気、そして美しい風景が広がることから、小説や映画、テレビドラマの舞台となってきました。
奥出雲は千年以上にわたって受け継がれてきた伝統的製鉄法「たたら製鉄」が盛んに行われてきた地域。たたら製鉄は優れた鉄の生産だけでなく、原料である砂鉄の採取跡地を広大な稲田に再生するほか、精錬に不可欠な木炭のために、綿密な計画のもとで、山林を永続的に循環利用できるよう30年周期の輪伐を繰り返してきました。このことから「日本古来のサステナブルな山林活用方法」とも言われています。
1991年に設立された仁多郡森林組合は、そんな奥出雲という地で、伝承されてきた技術だけでなく情報通信技術を積極的に取り入れ、より安全・快適に伐って、使って、植えて、育てる「循環型林業」を行っています。
「山を護るということは地球を護ること」。
この事実を広く知ってほしいと語るのは、理事・参事の吉川由希子さん、総務課課長補佐の村尾達也さんです。

仁多郡森林組合の仕事はどういったものなのでしょうか?
林業のお話とともに、仁多郡森林組合としてどのような取り組みを行っているのか、詳しくお話をお聞きしました。
Q.事業内容をお聞かせください。

仁多郡森林組合は、奥出雲町を中心に、森林の整備や木材の生産・販売等を行っている法人格の協同組合です。主な業務は山林整備や間伐、下草刈り、木材の伐採・搬出といった生産や、製材所・建設会社等への木材の販売です。そして、私たちの最大のミッションは、先人から受け継いできた森林資源を有効に活用し、後世に残すことです。
吉川さんによると、木を伐り、使い、植え、育てることによって森林を保全していくことは、地球環境を守ることに直結する非常に重要な仕事なのだそう。
一口に森林と言っても、その役割はさまざま。
例えば、生態系の維持というのも森林の役割の一つです。枯木や枯れ葉などの養分を含む土が河川を伝っていくことで下流へ運ばれますが、その運ばれた先は肥沃な土地となって、そこに生きる動植物たちを育んでいきます。流れ出した土は海にも運ばれ、海に生きる生物たちにも多大な影響を与えるのです。

わかりやすい話で言えば、森林があることでCO2が吸収され、地球温暖化の緩和にもつながっていますよね。これもある意味で生態系を維持するための役割だと言えます。もっと直接的な役割としては、森林があることで、土砂崩れや雪崩といった災害を防止したり、水源確保や水質浄化機能の維持、さらにはスポーツや保養行楽、祭祀や伝統文化の場の維持など、森林が果たす役割は本当に多岐にわたるのです。

ちなみにAIの分析結果によると、「20年後に林業がなくなる可能性は1%」だそうです。林業は、道なき道を拓いて人の手によって伐採が行われます。こればかりはどれだけIT分野が進化しても、取って代わられることはないでしょう。

Q.具体的な仕事内容を教えてください。

現場作業は体を動かすことが中心になりますね。チェンソーを用いた伐採や、重機による木材の搬出作業、伐採に必要な作業道の整備などは、まさしく体が資本となるものです。とは言ってもそれだけが仕事ではなく、伐採等の作業計画の立案や報告書作成といったデスクワークもあります。

伐採等の作業計画に紐づくのですが、伐採する森林の状態も把握しなければなりません。計画を立てる上で必要な調査業務も私たちの仕事の一つです。リスクのある仕事だからこそ、安全かつ効率的な作業を行うために準備は欠かせません。
「特に奥出雲の山々は急斜面が多く、山の環境に適応していくことが重要」だと村尾課長補佐は言います。

そこで、具体的な研修の内容と、仕事上で必要となる資格についてもお聞きしました。

まずは、実際の作業現場となる山林を歩くことから始めます。これは人の手が加わっていない地形や、山の植生を頭と身体で覚えてもらうためです。
その後、さまざまな必要資格を取得してもらい、チェンソーや刈払機などの機器操作、重機操作をはじめとした技術を段階的に習得していただきます。
林業の仕事には、実はさまざまな資格が必要とのこと。
チェンソーを扱うには「伐木等特別教育」を、刈払機を扱うには「刈払機安全作業特別教育」の受講が必須となります。
この他、高所で伐採作業をするための「高所作業教育」、伐り出した木を集材・移動させるには「小型移動式クレーン」や「簡易架線集材」の資格、伐採木をワイヤーで吊るす際には「玉掛け」の資格も必要となります。

林業関連の資格は一生モノです。業務に必要な資格は当組合が費用を負担して取得してもらいます。指導にはこの道数十年のベテランがマンツーマンで技術を伝えていきます。技術習得には時間も努力も必要ですが、組合として全力で支援するので、そこは安心してもらいたいですね。
そう話す村尾課長補佐からは、「次世代の人材を増やし育てる」という熱意が感じられました。

興味深いことに、この奥出雲町一帯では、昔から「男女問わず、皆で山を守るのが当たり前」という考えが根付いているんだとか。
仁多郡森林組合はその考え方を前提としているそうで、男女ともに働きやすい職場づくり、環境づくりにも取り組んでいるのだと言います。
その取り組みについて具体的にどのようなことが行われているのか、吉川理事に伺いました。

Q.女性が働きやすい職場づくりと環境づくりの実現にため、どのようなことをしているのでしょうか?

当組合で働く女性は、現在5名在籍しています。事務として働く方がほとんどですが、現場で活躍する女性職員もいます。事務と言っても、一般的なパソコン業務や経理を行うだけでなく、発注先との交渉はもちろん、測量や現場の補助なども行います。発注先と現場の作業員をつなぐ役割を担うもので、ほとんど男性職員が担当しますが、女性職員もいますよ。
吉川理事は「作業服にヘルメットを被る姿は、まさに“かっこいい女性”ですよ」と活躍ぶりを笑顔で教えてくれましたが、女性が現場作業を希望する場合、その人物の志向や適正、体力的観点から、慎重に判断をしたいとも言います。

職種そのものに男女の区別はありませんし、誰もが能力に応じて活躍できるよう配慮していますから、条件が合えば伐採等の重作業もお任せします。
現場作業の中には、下刈りや植林といった比較的軽作業と言えるものもあるため、女性が現場を希望される場合はそうした作業から始め、体力的にも慣れていってもらっています。
植林作業は“次世代につなぐ”実感が得られるため、林業の喜びを実感していただけると思います。

この他に、伐採木を集材する重機操作やトラックでの運搬業務など、スキルや資格を取得することで携われる業務もあり、これらは体力の有無に関係なくできる仕事です。男性のイメージが強い林業ですが、このように、女性が活躍できる場面は数多くあります。

当組合では、男女問わず、働きやすい職場環境を整えるために、さまざまな取り組みを行ってきました。特に産休・育休制度はしっかりと整備し、女性のみならず男性もほぼ100%取得できます。育児と仕事の両立も可能になるよう、全力で支援しています。
また、当組合は完全週休二日制のため休日も多く、しかも残業はほとんどありません。日が暮れて暗くなると作業できないので、17時20分には仕事を終了して帰宅できます。余暇の時間を自分の趣味や家族との時間などに十分使える、ワークライフバランスの良い職場です。
Q.どんな人材を求めていますか?

体力に自信がある方だけでなく、チームワークを大切にし、周囲と協力して明るく前向きに仕事に取り組める方を歓迎します。

自然環境に興味がある、機械操作が得意な方も積極的に求めています。また、林業の技術は日々進化していますので、新しい知識や技術を貪欲に学びたい方も向いているのではないかと思います。
Q.島根県で林業を目指す方へメッセージをお願いします。

奥出雲町の83%を占める広大な森林は、その6割が人工林であり、これらは私たちが大切に守り続けてきた宝です。何十年、何百年という長い年月をかけて成長する木々を次世代へ引き継ぎ、豊かな自然を後世に残していく。それが、仁多郡森林組合の使命です。「大切な自然と生活の護り手になりたい」というあなたを待っています。

業務体験や見学はいつでも受け付けています。林業に興味がある、実際に見てみたいといった方は、お気軽に仁多郡森林組合までお問合せください。
続いてお話を伺ったのは、地域おこし協力隊の一員として奥出雲町へIターンした吉田和弘さん。直近まで大阪のIT関連企業に勤務していましたが、「林業にどうしても関わりたい」という想いから転職と移住を決意し、奥出雲町へやってきました。

Q.転職のきっかけを教えてください。

自然への憧れと、新しいことに挑戦したいという想いが、転職のきっかけでした。林業の仕事は身体を鍛えられる仕事であると同時に、自然と一体になって働く喜びを得られる点、地域社会への貢献を実感できる点に大きな魅力を感じています。
前職は営業として厳しいノルマに追われる日々だったそう。趣味として仕事のストレス発散や息抜きを兼ねて登山やボルダリングをしており、その趣味を通して、自然と共にある暮らしに憧れるようになったと吉田さんは言います。
次第にその憧れは大きくなり、地方に移住して自然と生きる道を模索しはじめます。

どうするべきか情報を集めていた折、仁多郡森林組合と出合いました。ふるさと島根定住財団が主催する「UIターンフェア」の奥出雲町ブースで村尾課長補佐と話したことが、私の人生を変える転機でしたね。
「どうぞ、いつでもきてください。資格がなくても奥出雲に来られてから取ればいいですし、仁多郡森林組合が全力でお手伝いします」という、村尾課長補佐の言葉に背中を押され、翌年には奥出雲町への移住を実現したそう。

実家のある関西圏から車で約4時間という距離も、奥出雲町に決めた理由の一つです。必要があればすぐに帰ることができる、ちょうど良い距離感も魅力でした。
Q.島根県への移住をどう進めたか教えてください。

移住を決めて準備を始め、何度か奥出雲町へ足を運んでいたのですが、あるとき役場の方から「地域おこし協力隊」の募集情報をいただきました。驚いたことに、タイミングよく林業枠の募集があったので、応募することにしたのです。
こうして地域おこし協力隊員として、仁多郡森林組合に所属することとなった吉田さん。フォレストワーカーとして「林業活性化」をミッションに、組合の仕事風景をSNSで紹介するなど、林業を盛り上げる活動にも意欲的に取り組んでいます。

ふるさと島根定住財団にも多くの相談にのっていただきました。奥出雲町への現地見学や住居の案内など、本当に助かりました。
Q.研修はどういった内容でしたか?

さきほど村尾課長補佐からも説明がありましたが、山の歩き方から研修が始まりました。趣味で山を登っていましたし、そこまで苦労しないと思っていましたが甘すぎましたね。道すらない斜面、それでいて草木が生い茂る中を進んでいくのは、想像以上に大変なものでした。
安全に山に入るための特別な歩き方を習得するため、日常の歩き方では使わない筋肉が強い刺激を受け、両足だけでなくバランスを取るために使われた体中の筋肉が悲鳴を上げそうになったこともあったとか。しかし半年たった今では、だいぶ慣れてきたとのこと。

現在は伐採前の下準備である刈払いや、作業道の設置補助、調査班の測量補助などを担当しています。測量調査は、山の木を何本切るのか、どこを刈り、どこへ植林するかを地主さんと相談しながら、具体的な計画を立てるというものです。
測量作業は当然、山へ分け入って進めていきます。道なき山を自ら歩むというのは本当に大変なことですが、滅多に人が足を踏み入れることのない山頂から圧倒的な景色を味わえますし、これまで観たこともないような夕焼けに心が打ち震えます。奥出雲が誇る大自然の中にいられる喜びを実感しています。まるで山の生態系の一部になったような、そんな感覚が得られています。

「憧れのチェンソー伐採は、まだ少し先の話かな」と笑う吉田さん。チェンソーを扱うには講座受講と一定の実務をこなすことが必須ですし、重機を操作するには資格も不可欠です。

林業の仕事には取得すべき資格も多いですが、仁多郡森林組合のバックアップもあり、安心して取得を目指すことができています。何よりベテランの先輩方が丁寧に教えてくれるのは、本当に心強いことだと思います。
Q.仁多郡森林組合の雰囲気を教えてください。

とにかく先輩方がかっこいいんです! 重いチェンソーを担ぎながら、燃料缶を片手に軽々と山に入っていく姿は、いつ見てもしびれますね。そして、先輩方が大きな木を伐採する際の迫力は、言葉では言い表せない素晴らしさがあります。
そう先輩方への憧れを隠さず話す吉田さん。実は、一度山肌を滑り落ちてしまうということがありましたが、先輩が冷静に対応してくれたことで、大きな怪我もなく、無事に作業を終えることができたという経験をしたそう。そんな経験が、先輩方への信頼と尊敬の気持ちをより一層深めたのかもしれません。

安全のため、複数人で山に入るのは基本です。だからこそ、お互いに信頼し合える関係性が大切。ましてや先輩方は、山のことを何でも知っているプロフェッショナル。信頼が置けないわけがありません。心から頼れる存在です。
先輩方の深い知識と経験に裏打ちされた仕事ぶりを見るにつけ、「焦ってはいけないが、それでも早く先輩方のようにかっこいい職人になりたい」。そして、「奥出雲の山々を後世に残すために、一層精進していきたい」と、目を輝かせながら話してくれました。

Q.奥出雲町での暮らしはいかがですか?

大阪での生活に区切りをつけ、憧れの山の仕事に就けたこと、そして自然豊かな奥出雲町で暮らしていることをとても幸せに感じています。
仕事は朝8時から午後5時20分までと、残業もなく、プライベートの時間がたっぷり。最近では、体力づくりのため山道でのランニングも始められたそう。

ランニングを始めた理由は、自由に使える時間が増えたことはもちろん、今よりさらに体力をつけて、少しでも早く先輩方の仕事ぶりに近づきたいと考えたからです。
さらに、奥出雲で味わう食や、四季折々の風景は格別だとも教えてくれました。

奥出雲町は、何を食べても美味しく、特に地元の仁多米や野菜は格別です。四季折々の美しい風景、夜空に輝く星、夏の風物詩であるホタルなど、自然の美しさに感動する日々を送っています。

Q.最後に林業に興味を持った方へメッセージをお願いします。

林業は地域と自然を守るという大きな使命感を持って取り組める、やりがいのある仕事です。仕事を通じ、地域の人々と温かい交流を深め、豊かな人間関係を築くこともできます。大自然の中で働く喜びをぜひ体験してほしいですね。
私たちの暮らしと自然を守る森林の仕事。「この大切な営みを未来へつないでいきたい」そんな熱い思いを持つ方を、仁多郡森林組合は全力でサポートします。林業に少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ一度、見学にお越しください。
(2024年11月取材)
