今回、島根の夜を巡るのはこちらの3人!
島根生まれ島根育ちの「しまねLovers」編集部員。平日の夜は家でのんびり過ごすのが定番でしたが、「島根の夜、実はもっと楽しめるんじゃない?」とふと思い立ち、友人2人を巻き込んで検証の旅へ。
みさきの友人。島根暮らしは長いけれど、休日はもっぱらインドア派。はじめて見る景色やはじめての体験に、まっすぐ感動するタイプ。
みさきの友人。釣りとアウトドアが趣味で、島根の夜をいちばんよく知っている頼れる案内役。今回も「とりあえず全部積んできた」と、車いっぱいの道具とともに登場。
星空ドライブ 〜海岸線から大鳥居、夜の海辺のブランコへ〜
島根の夜を語るうえで、まず外せないのがドライブです。
島根は電車やバスの本数が少なく、車で移動する人が多いです。毎日運転していることもあって、仕事終わりに「ちょっと海まで行ってみようか」と気軽に車で出かけられます。
この夜、ハンドルを握ったのはみさき。かほとかずを乗せて3人でドライブに出かけました。目的地は、出雲市の海沿いです。
窓を少し開けると、夏の終わりの夜風がすっと入ってきました。
夜のドライブって、昼間より街が静かなのもあって特別感があるよね。
そうだね。夜に車で出かけるってわくわくするね!
お! 鳥居が見えてきたよ。
まず立ち寄ったのは、出雲大社の参道入口にそびえる「宇迦橋(うがばし)の大鳥居」。昼間は多くの参拝客や車が行き交う場所ですが、夜になると空気が一変します。昼間より人の気配が引いて、ただ大きな鳥居だけが、夜の中に静かに立っている光景は圧巻です。
わあ……昼間に何度も通ってる道なのに、まったく別の場所みたい。
見上げると、余計に大きく感じるね。
迫力があって、なんだか背筋が伸びちゃうね。
同じ場所でも、昼と夜ではこれほど雰囲気が変わるのかと驚かされます。信号を待つ間、3人はただ静かに、その圧倒的な存在感を見つめていました。
鳥居を抜けて、車はさらに西へ。国道9号を走り、やがて「道の駅キララ多伎」のあたりで海岸線へ折り返すと、左手に日本海が広がります。そして、ふと空を見上げると、頭上にはたくさんの星がまたたいていました。
ちょっと車停めよう。降りてみて!
え……うそ、すごくきれい!!
街灯がほとんどない海岸沿いの道だからこそ、空の明るさを邪魔するものがありません。目が暗さに慣れてくると、さっきまで見えなかった小さな星までじわじわと浮かび上がってきます。聞こえるのは波の音だけ。
星って、こんなにたくさんあるんだね。
街の灯りが少ないからだね。都会だと「不便」って言われる街灯の少なさが、ここだと贅沢になるんだなぁ。
そして最後に向かったのが、海沿いにあるカフェ「WINDY FARM ATMOSPHERE(ウィンディファーム アトモスフィア)」。ここの名物の一つは、海に向かって吊るされた大きなブランコです。
目の前に広がるのは、暗い海と、その上に広がる星空。昼間は絶景のフォトスポットとして知られていますが、夜はまた別物でした。写真には写せない数々の星や、黒い海と白い波のコントラストは、夜に訪れて自分の目で見てこその絶景でした。揺れるたびに潮の匂いを含んだ風が顔にあたって、頭の中が少しずつ空っぽになっていきます。
ブランコって、何年ぶりだろう……。風がすごく気持ちいい。
悩みごとが、どうでもよくなってくるね(笑)。
夜のドライブで、島根の人が気をつけていること
島根の夜のドライブには、大切な心得があります。それは「飛び出してくるのは人だけではない」ということ。山沿いの道では、タヌキやシカ、イタチといった野生動物が道路を横切ることが珍しくありません。地元の人が夜道でスピードを抑えめにするのは、そういったハプニングに備えた習慣です。
スポット・施設データ
出雲大社宇迦橋の大鳥居
〒699-0711
島根県出雲市大社町杵築南1388
道の駅キララ多伎・海岸線道路
〒699-0902
島根県出雲市多伎町多岐135付近
FARM ATMOSPHERE(ウィンディファーム アトモスフィア)
〒699-0816
島根県出雲市湖陵町大池5−1
クワガタ採り 〜大人も大興奮!夜の公園で虫採りアドベンチャー〜
島根の魅力の一つは、「豊かな自然に囲まれた公園が数多くある」こと。
街から少し車を走らせるだけで、そこはもう大自然です。
そして、子供のころ夢中になった人も多い、クワガタ採集が夜の公園でできるんです。
この夜3人が向かったのは、出雲市知井宮町の真幸ヶ丘公園です。
はい、これ。虫取りあみ。ひとり1本ずつね。
準備いいね!(笑)
わたし、虫を探しに夜の公園に来るの、人生ではじめて……!
懐中電灯を片手に、木々のあいだを進みます。やみくもに探すのではなく、狙うのは樹液が出ている木。幹に黒くにじんだ跡があれば、そこは虫たちの食事処です。
光をあてすぎると逃げちゃうから、そーっとね。幹の裏側とか、根っこのあたりも見てみて。
なるほど……そーっと、そーっと。
数本の木を見てまわり、だんだん目が慣れてきたころ。
……あ!いたいた!ここ!
え、どこ!?
お、コクワガタだ!しかも雄と雌、両方いるね。
懐中電灯の光の先に、つやのある黒い体が2体。その瞬間、3人とも小学生のような無邪気な顔になっていました。
捕まえられた……!思ってたより、ずっと力が強いんだね。
ほんとだね!大人になってから、こんなに夢中で夜の公園を歩くことになるとは思わなかったなぁ(笑)。
ちなみにこの時期は、カブトムシが採れることもあるよ。
暗い森のなかで懐中電灯の灯りだけで過ごした時間。スマホもテレビも使っていないけれど、3人のテンションは最高潮に達していました。
採った虫は、どうする?
虫採りで大切なのは「採ったあとのこと」です。持ち帰って飼うなら最後まで責任をもって。自信がなければ、見つけた場所に返してあげるのが一番です。この日も、写真を撮ったあとは元々いた木にそっと戻しました。
また、公園や緑地によっては動植物の採取が禁止されている場所もあります。出かける前にルールを確認しておくと安心です。来年もその次も同じ場所で出会えるように、というのが、島根の夜の公園との付き合い方かもしれません。
スポット・施設データ
真幸ヶ丘公園(まさきがおかこうえん)
〒693-0034 島根県出雲市知井宮町1327
宍道湖畔ナイトウォーク 〜水辺の夜景と松江城〜
島根の夜にはもっと静かな楽しみ方もあります。
舞台を松江に移して、3人でのんびり歩いてみることにしました。
宍道湖といえば夕日が有名ですが、日が落ちたあとの湖畔もまた格別です。
白潟公園のあたりから湖沿いを歩くと、対岸の街明かりが水面に落ちて、ゆらゆらと揺れていました。
夕日の時間はよく来るんだけど、暗くなってから歩いたことはなかったかも。
夕日が終わると、みんな帰っちゃうもんね。でも、ここからが静かでいいんだよね。
この時間は、散歩だけでなくランニングや犬の散歩にもぴったりだね。
観光地でありながら、夜は完全に地元の人の生活の場に戻る。この切り替わりが、宍道湖畔のおもしろいところです。
湖畔を抜けて、そのまま松江城のほうへ向かってみます。
堀沿いを歩いていくと街の音が遠ざかっていき、あたりはだんだんと静かになります。
昼間に見る城山公園と、全然印象が違うね……。
石垣もライトに照らされてるところだけ浮かび上がって見えるのが、なんだかかっこいい。
ここ、観光で来る人はだいたい昼間に来るからね。夜に来れるのは地元の特権かも。
スマホをしまって、ただ歩く。それだけの時間なのに、歩き終わるころには頭の中や心が、すーっとすっきりしていました。島根の夜の、こういう「ゆったりした贅沢」もみんなに知ってほしいとっておきの過ごし方です。
秋には、城下町が行燈に包まれます
今回は歩くだけの夜でしたが、秋の松江には他にも楽しみがあります。松江城周辺を手作りの行燈(あんどん)やライトアップで彩るイベント「松江水燈路(まつえすいとうろ)」です。石畳や老松がやわらかな灯りに照らされ、城下町全体が幻想的な雰囲気に包まれるのだとか。
今回は時期が合わず体験できなかったのですが、地元でも「あれは一度は見ておくべき」と言われる人気のイベント。次は必ず、行燈が並ぶ夜に歩きに来ようと3人で誓いました。
スポット・施設データ
宍道湖畔(白潟公園周辺)
〒690-0062 島根県松江市魚町ほか
松江城
〒690-0887 島根県松江市殿町1−5
ローカル居酒屋 〜「夜が早い」なんて誰が言った?深夜まで続く島根の夜〜
「地方の夜は早い」。これは島根の夜について、いちばんよく言われることかもしれません。
たしかに、商業施設の閉店は早め。けれど、松江や出雲の街なかには、夜遅くまで灯りをともしているお店もあります。歩き疲れた3人が向かったのは、松江の居酒屋です。時刻は夜の21時を過ぎている頃でした。
お腹すいた……。
まかせて。この時間からでも行けるとこ、ちゃんとあるから。
この時間ってもう、どこも閉まってると思ってたよ。
暖簾をくぐると、すでに店内はいい具合ににぎわっていました。カウンターには仕事帰りらしい人たち、奥の席からは笑い声。3人は席に着くと、さっそくおちょこに日本酒を注ぎ合いました。
島根は海と山の両方に恵まれた県のため、その日に揚がった新鮮な魚介と、地元の野菜が並ぶ居酒屋も数多くあります。そこに合わせるのは、もちろん地酒。島根は日本酒発祥の地とも言われ、県内各地に個性豊かな酒蔵が点在しています。
やっぱりお刺身がおいしいんだよなぁ。
身がしっかりしていて、甘みがある……おいしい。
島根の酒って、食事と一緒に飲んでばっちり合うものが多いんだよね。
会話がはずむうちに、気づけばけっこうな時間が経っていました。それでも店内の熱気はまったく落ちません。
「田舎は夜が早い」なんて言われるけど、遅くまでやっているお店もあるんだね。
そうなの。自分の「いつもの店」ができたりして、お気に入りのお店に通う楽しさも、島根のいいところかも。
顔を覚えてもらえたりすると、自分にとって落ち着ける居場所だよね。
お腹を満たすためだけの場所ではなく、人と人が遅くまで話し込める「温かい居場所」。それが、島根の夜の居酒屋です。
島根の飲み会には、ちょっとした作法があります
島根で夜に飲むなら、覚えておくと便利なことがひとつ。それは「帰りの“足”を先に決めておく」ことです。公共交通の本数が限られているため、タクシーを予約しておく、代行を呼ぶ、家族や友達に迎えをお願いしておく、歩いて帰れる範囲で店を選ぶ——地元の人はこれを当たり前にこなしてから、飲み会に出かけます。
慣れてしまえばどうということはなく、むしろ「今日は歩いて帰れるあの店にしよう」という選び方も、自分の行きつけを増やしてくれます。
店舗データ
居酒屋 佐香や
〒690-0842 島根県松江市東本町1-29
TEL 0852-28-0210
営業18:00〜1:00(日曜定休)
イカ釣り 〜防波堤から挑む、大人の夜遊び〜
太陽が日本海に沈んで、あたりが暗くなりだしたら、イカ釣りの時間です。島根で育った人にとっては見慣れた景色ですが、夕日が沈む日本海にぽつぽつ灯り始める漁火(いさりび)のひとつひとつが、魚やイカを狙う漁船の灯りです。
さて、自分たちで釣ってみたらどうなのか。
3人は出雲市の大社漁港へ向かいました。
挑戦するのは、防波堤からの「エギング」。エギ(餌木)と呼ばれるエビの形をした疑似餌を投げて、糸を張ったりゆるめたりしながらイカを誘う釣り方です。船をチャーターしなくても、堤防から手軽に始められるのが魅力で、島根では夜のアクティビティとしてすっかり定着しています。
竿は貸すから大丈夫。狙い目は、常夜灯の明かりが海に差し込んでるあたりだね。
なんで明るいところなの?
光に小魚が集まって、それを狙ってイカも寄ってくるからなんだよ。
かずは慣れた手つきでエギを取り付けて、ロッドをみさきとかほに渡しました。
教わったとおりにエギを投げ、ロッドを軽くしゃくって、沈める。そしてまた、しゃくって、待つ。
波の音と、リールを巻く音だけが続きます。
……これ、何も起きない時間が意外と長いんだね。
そうだね。でもこの"待ってる時間"が長いからこそ、釣れた時の喜びが物凄いんだよね。
そして結論から言うと——この日は、見事にボウズでした。
※ボウズ・・・釣れないこと
気合いを入れて来たのに、1杯も釣れなかった……!
潮とタイミングだからね。こればっかりは、こっちの都合ではどうにもならないんだよなぁ。
ちなみに、上手く釣れた時はこういう感じなんだけどね!
釣ったばかりのアオリイカ
おお……! 綺麗な透明感と、このシルエット! コンディションが良い日にはちゃんと釣れるんだね!
そうそう。釣れる日もあれば、釣れない日もある、それがイカ釣りだよ。
……まあ、次は釣るけどね。(悔しい!)
けれど不思議なことに、帰り道の3人はまったく落ち込んでいませんでした。
真っ暗な海に向かって竿を振り、潮風を浴びながら、ただ黙って待つ。その時間そのものが、いつのまにか気持ちよくなっていたからです。明るい街で過ごしていたら、絶対に味わえない静けさがそこにありました。
大社漁港周辺は、シーズンになるとシロイカ(剣先イカ)やアオリイカが狙える人気スポット。島根県内にはほかにも、松江エリアの恵曇(えとも)港や出雲の宇竜(うりゅう)港、浜田エリアの福浦漁港、さらには隠岐諸島まで、県外から釣り人が訪れる場所が数多く点在しています。
はじめての夜釣りで、本当に必要なもの
夜釣りに興味がわいた方へ。道具よりも先に用意してほしいものが3つあります。ライフジャケット、滑りにくい靴、そしてライトです。堤防は昼間に見るより足元が暗く、濡れて滑りやすい場所もあります。
釣り場のルール確認も忘れずに。漁港には立ち入り禁止区域が設けられていることがあり、ゴミや仕掛けの放置はトラブルのもとになります。気持ちよく通い続けるためのマナーとして、地元の釣り人ほど大切にしているポイントです。
スポット・体験データ
大社漁港
島根県出雲市大社町杵築北 付近
そのほかの県内イカ釣りスポット
恵曇港・宇竜港(松江市)/浜田漁港・福浦漁港(浜田市)/西郷港・浦郷港(隠岐)
島根の夜を巡ってみて
星空の下をドライブして、夜の公園でクワガタを探して、湖畔と松江城周辺を歩いて、居酒屋で遅くまで語り合って、防波堤で竿を振る。
こうして並べてみると、ずいぶん濃い夜を過ごしていました。
「島根の夜はなにもない」って、どこかでわたしも思っていたの。でも違った。なにもないんじゃなくて、知らなかっただけだったね。
しかも、どれも全然タイプが違うのがいいよね。静かに過ごしたい日も、思いきりはしゃぎたい日もあるから。
そう考えると、むしろ迷うよね。今夜は何しようかなって。
おもしろかったのは、どれも「特別な日」の遊びではなかったことです。どれも大がかりな計画や遠出が必要なものではありません。
思い立った日に、仕事終わりに、ふらっと。島根の夜の楽しみは予定を立てて集まるものだけではなく、暮らしの延長でひょいと手が届くところにありました。
昼間の観光とはひと味違う、島根の夜。
もし、観光や里帰りで島根に来た際、予定のない夜があれば、ぜひ思い出してみてください。
きっとあなたも、「今夜は何をしようか」と、うれしい悩みを抱えることになります。
※こちらの記事は2026年10月公開