しまねUIターン情報誌 ビーンズ BeanS しまねUIターン情報誌 ビーンズ BeanS

Vol.70 Autumn 2026

公益財団法人 ふるさと島根定住財団

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Story 01

森の小道で語る早川隆さん

人とつながる手応え。

脱、タイパ・コスパ生活。

早川さんのイラスト

Uターン 移住3年目 早川隆さん(43) 山口県から隠岐の島町へ家族で移住

プロフィール

隠岐の島町生まれ。高校卒業後、広島の専門学校で旅行業を学んだ後、山口県の旅行会社に就職し、添乗員として国内外を飛び回る日々を送る。同じ会社で出会った妻と結婚し、家族を連れて隠岐へUターン。地域おこし協力隊を経て、「隠あい心株式会社」を設立した。

Before:住所 山口県、職業 会社員(旅行会社)、家族 妻、子ども2人、趣味 登山、スポーツ。After:住所 隠岐の島町、職業 隠あい心株式会社 代表、家族 妻、子ども2人、趣味 登山、スポーツ。

育ててくれた島への恩返し。今の自分ができることを観光という仕事を通して、少しずつ返していく。

島の上で手を振る早川さん家族のイラスト

日本海に浮かぶ隠岐諸島の一つ、隠岐の島町。自然がつくり出す雄大な景観や、島に根づく伝統など、この島の持つ魅力を観光業を通して伝えているのが、「隠あい心(おあいこ)株式会社」代表の早川隆さんだ。
早川さんは高校卒業後、広島県で旅行業を学び、山口県の旅行会社で経験を積んだ。そして、「いつか隠岐に帰り、観光業で旗を揚げたい」という昔からの夢を叶えるため、40歳の節目に家族とともに隠岐へ戻ってきた。約20年ぶりの故郷は、幼い頃に見ていた町とは少しずつ姿を変えていたが、島の人たちは早川さん一家を温かく迎え入れた。「住む場所も、次々と広がる仕事も、家族や知人、地域の人たちとのつながりがあったからこそ」と早川さんは嬉しそうに話す。

闘牛と一緒に並ぶ地域の人たち

利益や生産性だけじゃない
「誰かの笑顔」が原動力

早川さんの仕事は、ひとつの肩書きでは収まりきらない。月に10回ほど行われる「観光牛突き」の日は朝からモーモードームへ向かい、実況ガイドを務める。そして20分ほどの取組の後は、地域の人たちとおしゃべりを楽しむのが恒例だ。他愛のない会話に見えても、早川さんにとっては地域の今を知り、島の先輩たちとの関係を育てる大切なひとときだ。
会社に戻れば、旅行日程表の作成、隠岐諸島のガイド、ジオパーク関連業務、さらには移住定住の相談窓口や伝統民謡のマネジメントまで、担う役割は数え切れない。「プライベートな時間は基本ありません」と早川さんは笑うが、その言葉に悲壮感はない。人に喜んでもらうために動き、必要とされればできる限り手を差し伸べる。誰かの笑顔が早川さんのモチベーションなのだ。
かつて島で懸命に働いていた両親の背中を見て育ったように、自分もまた、誰かのために汗を流す姿を子どもたちに見せたいと早川さんは語る。「妻や子どもたちがいてくれるから外で頑張れる。本当に感謝しています」

神社の前を歩く早川さん家族

自宅からほど近い玉若酢命神社へ。手をつなぎ、おしゃべりしながら歩く楽しいひととき。

自然と笑顔になれる場所
故郷だからこその安心感

外に出たからこそ気づけた島の魅力もある。隠岐で生まれ育ちながら、当時は知らなかった島の素晴らしさが、県外での経験や、帰島後の仕事を通して新たに見えてきた。「知るたびに、島を好きになるんです」と早川さんは声を弾ませる。生まれた場所の良さを知らないまま過ごすのはもったいない。だからこそ、観光客だけでなく島の子どもたちや島外で暮らす人々へも、隠岐の面白さを伝えていきたいと話す。隠岐の島町の魅力を尋ねると、早川さんは「安心できる島」と答えた。家族や顔なじみがいて、自然と笑顔になれる場所、ふるさとだからこその安心感がそこにはある。
会社名の「隠あい心」には、隠岐四島をお互いさまの関係で結びたいという思いが込められている。ゆくゆくは担い手を育て、観光だけでなく地域活性化につなげるのが目標だ。
仕事に頼まれごとにと、休む間もない早川さんの一日。しかし、その一つひとつが島との絆を深め、自分の役割を実感する手応えになっている。「お前が帰ってきてくれて助かる」。そう言ってくれる地域の人たち、支えてくれる家族、そして自分を育ててくれた島に、今度は自分が恩返しをしていきたい。その思いを胸に、早川さんはこれからも島の魅力を伝え続けていく。

家族や知り合いがいて、自然と笑顔になれる場所。故郷だからこそ戻れる素の表情がある。

赤い鳥と黄色い葉のイラスト

マイクを手に牛突きの実況をする早川さん

約800年の歴史を持つ「隠岐の牛突き」は日本最古の闘牛といわれる。迫力ある取組の後は、地域の先輩たちとの談笑の時間。早川さんにとっては皆、父のように温かく見守ってくれる存在だ。

モーモードームでぶつかり合う牛たち
滝の前で観光客をガイドする早川さん
灯台を望む丘で景色を案内する早川さん
森の道を家族で駆ける早川さん一家

隠岐の自然や歴史、土地に息づく物語をガイドする早川さん。「外に出たからこそ気づいた魅力を伝えたい」と語る。休日は玉若酢命神社境内の西側丘陵へ。豊かな自然の中で家族と遊ぶ時間が、日々の活力になっている。

移住タイムライン

18歳
高校卒業後、旅行業を学ぶため、広島県の専門学校へ進学。
20〜39歳
山口県下関市の旅行会社に入社。添乗員として国内外を飛び回る日々を送る。同じ会社で働いていた妻と結婚し、双子の子どもにも恵まれる。
40歳
「隠岐のために働きたい」という思いから、22年ぶりに帰島。隠岐の島町地域おこし協力隊に着任し、役場で関係人口の創出に取り組む。
41歳
隠あい心株式会社を設立。
43歳
地域おこし協力隊での経験を経て、隠あい心株式会社の事業を本格始動。

利用した制度

・引越し費用割引サービス

島根県外から島根県へ引越しの際、定住財団からお申込みいただくと、引越し基本料金から20~30%の割引サービスを受けることができます。

・地域おこし協力隊

地方自治体が都市地域からの移住者を地域おこし協力隊員として任命し、様々な地域協力活動を行いながらその地域への定住・定着を図る総務省の取組です。