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Ejima Kazuoki #Iターン #農家

これがわたしの、リアルなしまね暮らし。
from 大阪府 now 飯南町
農業はまるで経営戦略ゲーム
島根で見つけた自営業の魅力
大阪で営業職に就いていた江嶋さん。既存の働き方に物足りなさを感じ、「いつか自分の力で、主体的に価値を生み出せる仕事がしたい」という意欲を胸に秘めていた。
そんな江嶋さんが次の一歩として選んだのは、まったくの未経験だった農業。理由はシンプルに「美味しいものが食べたいから」。
しかし、単なる食の探求にとどまらず、農作物の収益性を徹底的に調べ上げ、「稼げる」と確信を得たパプリカ栽培に注目。
研修先を探す中で飯南町の充実した制度を知り、すべて自分の采配次第で結果が出る働き方を実現するため、飯南町への移住を決意した。
移住 before after

移住タイムライン

移住前に平野さんが悩んだこと

生まれ育った大阪での生活は、淡々と過ぎゆくものだったと江嶋さんは振り返る。送電鉄塔部品メーカーで営業として働き、仕事に充実感を得ながらも「この会社に一生いるつもりはない」という想いが常にあったそう。
自ら主体的に動く仕事をしたいという意欲が、江嶋さんを次なるステップへと押し進めていく。
貯金が貯まったことを機に、どんなことに挑戦するかを考えたとき、体力のあるうちに農業をやってみたいという想いが芽生えた。
収益性を調べ、農業でも十分な収入が見込めると確信した江嶋さんは、未経験ながらも、農業の世界へ踏み出すことを決めた。

移住検討段階でやったこと

徹底した情報収集と「移住相談会」での研修先紹介
「稼げる農業」を目指す江嶋さんが最初に行ったのは、徹底した情報収集だった。農林水産省やJAのウェブサイトを読み込み、さまざまな作物の生産量や収益率を調査した。
そこで着目したのがパプリカだった。競合の多いトマトやピーマンと違い、パプリカなら新しい市場を切り拓けると判断したのだ。価格・需要も織り込むと、十分安定した収益が見込めると考えた。
そうと決めると早速研修先を探し始め、飯南町に研修先があることを知る。同時期に大阪で開催された「移住相談会」に足を運ぶと、定住財団から「飯南町に2年間の研修制度がある」ことを教わる。そこで飯南町役場の担当者を紹介してもらい、話はとんとん拍子に進んでいった。
飯南町に移住し、2年間のパプリカ栽培研修を受けた。技術的な壁に直面するたびに、師匠や農家の人々から助言を得て、着実にステップアップしていった。研修を経て30歳で独立就農すると、農業技術だけでなく、経営者としての視点に目覚め、「自営業の可能性」に魅了されていった。

リアルなしまね暮らし

自然の厳しさと地域密着の暮らし
移住して感じたのは、良くも悪くも「何もない」こと。必然的に買い物や外食の選択肢は圧倒的に減った。
環境面で言えば、冬は雪が多く、毎日の雪かきが重労働となる。春の激しいスギ花粉の飛散など、都市部では経験のなかった自然の厳しさを実感したという。
しかし、そうしたギャップを江嶋さんは「稼げればどこでも生きていける」という価値観で割り切って受け入れている。また、人との距離感は都会よりはるかに近いが、それにも前向きだ。地域のイベントや肉体労働に、若い働き手として積極的に参加。「ギブアンドテイク」を大切にし、地域の人々との信頼関係を築いている。

point 平野さんが利用した支援

UIターンしまね産業体験
UIターンし、農業・林業・漁業・介護・伝統工芸等の産業を体験する場合、滞在に要する経費の一部を助成する制度。受入先から直接指導してもらい、知識のみならず技術も学ぶことができます。
マッチングから体験期間中の相談まで、定住財団も細やかにフォローします。
自営業の可能性に魅了
「農業も楽しいが、自営業が圧倒的に楽しい」と語る江嶋さん。農作業に没頭するうちに、自営業の可能性に魅了された。
農業とは壮大な経営戦略ゲームそのもの。結果はすべて自分の責任であり、体力や時間といった限られたリソースでどれだけ収益と生産量を上げるか。
「経営という名のパズルを解き明かすことが、仕事のやりがい、生きがい」だと、本当に楽しそうに話してくれた。