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移住×起業=ちょうどいい幸せ

移住して島根で起業したお二人に、
“ちょうどいい幸せ”を見つけるまでの
リアルを聞きました。

造園業/益田市 野村 大輔 さん

益田市美都町にUターン後、株式会社石見造園を設立した野村大輔さん。現在は10名の社員とともに、島根県西部から広島県、山口県まで造園・外構工事を手掛ける。

Uターンのきっかけを教えてください

高校卒業時に、いつか益田に戻ることを決めていました。独立も視野に入れており、独立するなら地元でしたいと考えていました。

造園業との出会いについて教えてください

高校の進路指導の先生から紹介されたのが浜田市の造園業でした。就職してその面白さにはまり、「この仕事なら独立できる」と直感しました。調べてみると、造園の需要は減っているものの、職人の供給が圧倒的に少ないブルーオーシャンだったんです。
独立を目指していることを知った社長が、広島の造園会社を紹介してくれて転職。以降6年ほど職人として技術と知識を磨きました。

島根で起業するメリットは?

土地の安さですね。造園業は大きな機械やトラック、植木のストックヤードが必要で、そうした設備投資が島根では格段に少なく済みました。初期コストが抑えられる分、利益を上げやすくなると思います。

起業してから苦労したことは?

広島から益田市へ戻った時点で無一文でした(笑)。父親から軽トラックを譲り受けて事業をスタート。PCの使い方も営業のやり方もわからず、庭のある家に飛び込んで剪定をさせてくれと頼み込んでいました。
数千円~数万円の小規模な仕事を積み重ねましたね。この経験があるからこそ、会社が大きくなっても現場の大小に関係なく仕事をしていきたいという思いがあります。

移住×起業で得られた「ちょうどいい幸せ」は?

広島時代は充実していましたが、どこか息苦しさを感じていました。それがUターンで一変しました。大げさに言えば自由を手に入れたというか。
また、子育てするなら自然に触れ合い、たくましく成長できる場所を望んでいたので、その意味でもUターンして良かったです。

今後の展望を教えてください

美都町内に新社屋を建設することが決まっています。2025年秋頃着工、2026年春完成予定です。これはどれだけ会社が大きくなっても、本社は絶対に美都町から外には出ない、という意思表示も込めています。「こんな庭が作れる」ことを見せるモデルガーデンとしても活用していく考えです。

移住×起業についてアドバイスをお願いします

島根には需要に対して供給が追いついていない業種がたくさんあります。特に技術職はその傾向が顕著なので、ぜひその領域を狙ってもらいたいですね。
島根は起業コストが安いという大きなメリットがあるので、そこを徹底的に活かすことで起業もしやすいと思います。
自然の中で趣味を楽しむ時間も容易に確保できるのが島根のいいところ。生活の質が向上することは、回り回って仕事にもつながるので、暮らしも大事に考えていってほしいですね。

ベーグル専門店/松江市 橋本 純子 さん

2023年10月末、松江市にオープンしたベーグル店「ここくる」のオーナー、橋本純子さん。オープン直後から連日多くのお客さんが訪れる人気店となり、2025年5月に出雲店をオープン。多忙な日々を送る。

移住するきっかけは?

鎌倉でベーグル店を営んでいた頃、体調を大きく崩し、それによって考え方や価値観が大きく変わって、やりたいことをやるようになりました。
ずっと行きたかった島根旅をしたのもそのおかげですね。出雲大社はもとより出雲の山々、空や雲の表情が豊かで、あっという間に魅了され住みたいと思ったんです。その後、当時住んでいた物件の契約更新が近くなり、島根に引っ越すことにしました。

起業が前提でしたか?

移住を意識し始めたときはいくらあれば生活できるか試算して、「住み込みなら収入が10万もあればいける」と思っていました(笑)。
でも、占いの本に「今までやってきたことが実を結ぶ」と書かれていたのを読み、やはりベーグルを続けようと店舗物件に興味を持つようになったんです。
そんな折、松江店の大家さんと知り合い、出店の話が進んで。家より先に出店の準備が進み、銀行との契約が迫ってきて、慌てて家を決めるほどのトントン拍子でした。出店を決めて半年ほどでオープンに漕ぎ着けました。

苦労したこと、大変だったことはありますか?

自治体等の補助金や支援制度が利用できなかったことですね。開業までの流れが早く、申請のタイミングが合わなかったんです。起業は事前の情報収集が欠かせないと痛感しました(笑)。
移住面では、無農薬野菜やこだわりの食材が入手しづらいこと。鎌倉は無農薬野菜がたくさんあって入手先も把握できていましたが、島根では開拓が必要で。最近、やっと整ってきましたね。

移住×起業で得られた「ちょうどいい幸せ」は?

島根に移り、ベーグル店を立ち上げ、一緒に歩んでくれる仲間が集まって、今こうしていられることそのものが、幸せだと感じています。また、島根に来て体調のことを意識せず、フラットな感覚で過ごせることが増えたのも幸せの一つですね。

今後の展望を教えてください

出雲店がオープンしたばかりなので、まずは体制やフローを定着させようとしています。松江店では徐々に新たなチャレンジをしたいですね。県内の農家さんとつながって、無農薬野菜を使ったベーグルサンドを作ったり、道の駅のように無農薬野菜を販売できるようにしたり。地域貢献につながることをしたいですね。

移住×起業についてアドバイスをお願いします

最も大切なのは、自分がそこにいることを想像したときにワクワクするかしないか。ワクワクがないと現実化は難しいです。それと流れに身を委ねること。
鎌倉時代にサーファーから「いい波が来ても乗れないときは違う波だから待つ」「必ず自分に合うタイミングがある」ことを教えてもらいましたが、それは人生においても同じだと思いますね。

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