しまね趣味時間野球

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野球でつながる・広がる
笑顔と幸せがある町

家業を継ぐためUターンした道畑健太さん。
家庭と仕事を大切にして暮らす中で、
生きがいにしているのが野球だ。
楽しみであるだけでなく、
仲間や地域の人との絆にもなっている。

 島根県のほぼ真ん中に位置する邑智郡川本町。豊かな山林に囲まれた人口約3300人のこの町で、道畑さんは育った。幼い頃から夢中になっていたのが野球。お父さんが地元の野球クラブ「川本西スポーツ少年団」の指導者だったため、生活の中にいつも野球があった。毎日のように兄弟や近所の友人らと一緒になってバットやグローブを持ち出し、泥だらけになって遊んでいたという。中学・高校と部活で野球を続け、卒業後は広島県の専門学校に進学。技術を磨いてUターンし父と親族が経営する消防設備業の会社を支える、それが道畑さんのライフプランだった。「修業のため島根県外の企業に入ろうと就職活動をしている最中、父が倒れたので川本に戻りました。数年後に帰るつもりだったので、予定がちょっと早まったような感じでしたね」。その後、お父さんは他界。道畑さんは親族とともに家業を続け、地元で結婚。現在は二児の父となり、仕事にも育児にも力を注ぐ毎日を送っている。その中で励みになっているのが野球だ。

 Uターン後、地元の仲間と野球を再開し、2011年に「川本ベースボールクラブ」を結成した。道畑さんのポジションはキャッチャー。弟さんもピッチャーとして所属し、兄弟でバッテリーを組んでいる。チームメイトのほとんどが中学・高校の野球部で馴染みのある友人たちだ。川本ベースボールクラブは全日本軟式野球連盟に加入し、最上位のA級クラス。「県内の強豪のほとんどが地元企業。うちは野球好きが集まっている地域のクラブなので、A級では珍しいと思います」。川本ベースボールクラブはC級・B級時代に全国大会や西日本大会に出場し、A級に入ってからも島根県大会で準優勝3回と好成績を収めている。強さの秘けつを道畑さんに訊くと「結束ですね。それが強さだと自信を持って言えます!」と即答。
 練習は週1回、町民体育館の室内練習場で行われる。練習場と球場は町民なら格安で使え、川本ベースボールクラブは川本町体育協会に所属しているため無料で使用できる。町を貫くように流れる江の川の堤防は格好のランニングコース。清々しい空気の中、季節の移ろいを感じながら気持ちよく走れる。川本町は中山間地域の小さな町だが、スポーツに打ち込みたい人にとっては快適な環境と言えるだろう。

 試合にはメンバーの家族や地域の人が観戦にやってくる。子どもたちも集まり、大きな声で応援。子ども同士でじゃれあったり、年長の子が年下の子をあやす姿も。大人たちはわが子であろうとなかろうと関係なく見守り、必要があれば声をかけ世話をする。道畑さんに言わせると「子どもが集まるとそこがすぐ保育園になる」。地域全体で子育てをする環境が自然にできているのだ。
 遊び場に事欠かないのも川本町の魅力。豊かな緑の山々、江の川の河畔、町営の公園には遊具やプールもある。思い立った時に家族同士で集まってデイキャンプをすることもある。少し車を走らせれば日本海に出て海水浴や釣りができる。「自然が豊かでのびのび過ごせます。小さな町だけどスーパーやホームセンター、コンビニなど日常的に買い物をする施設は揃っているので、生活に困ることはない。子育てしやすく暮らしやすいので、幸せだなと思います」
 道畑さんは町の人の優しさも魅力だと語る。「本当にあったかい町なんですよ。全国大会に進んで京都への遠征が決まったとき、僕たちは有志のクラブなので交通費などの資金が全て自腹に…。困っていたら地域の方が寄付を集めてくれて、道の駅にメンバーの名前が入った横断幕を掲げるサプライズまで! 町を歩いていると『頑張れよ!』と声をかけてくれ、若い世代を応援するムードを感じます」。取材時も町内の人が応援に来ていた。道畑さんを幼い頃からよく知っているそうで、「健太のおかげでクラブが盛り上がっとりますよ!」と朗らかに話していた。

 「夏に町民野球大会があります。中学生から60代ぐらいまで、年齢も所属も関係なくみんなで遊ぶ交流試合のような感じ。夏休みに帰省した学生も参加するんですよ。いつかUターンを考えるときがきたら、ふるさとには野球という楽しみがある、迎えてくれる仲間がいると思ってもらいたいです」。実際に道畑さんの知っている学生の何人かは、野球が盛んであることを魅力に感じてUターン就職を決めているそうだ。クラブのメンバーには近隣の市からの移住者もいて、野球が地域に溶け込むきっかけになっている。「Iターンの人も少しでも興味があったらうちのクラブに遊びにきてほしい。仲間の輪が一気に広がりますよ。子どものクラブもありますし、奥さんやお子さんも友達ができるはず」。野球を通して誰もが住みたくなる地域づくりを目指す道畑さん。それにはどんなことが大切かと尋ねてみると、「僕たちがいつも楽しそうに過ごしているのが一番でしょうね」と答えてくれた。野球をしている時の道畑さんとメンバーたちの表情は底抜けに明るい。仲間の好プレーに子どものようにはしゃいで心から喜び、時には朗らかな励ましの声が飛ぶ。その姿からは互いへの深い親愛と敬意が感じられた。大人になってもそんな関係を持ちイキイキと暮らしている人たちの存在は、何よりも地域の魅力になるだろう。

舟木 睦さん
道畑健太さん
島根県川本町出身。家業である消防設備会社に勤務。二児の父。川本ベースボールクラブの立ち上げメンバーで、ポジションはキャッチャー。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。

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