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この場所だから見つけられた
私にできること、本当に欲しいもの

島根県中部の大田市に住む清水妙子さん。
トレンダーズの島根オフィスでWEBライティングやメディア運営に携わっている。
移住したこの町で、自身の望む暮らし方と働き方を見つめ直し、新しい道を拓いている。

ロールモデルとなる存在に出会い、
新しい世界へ

 鳥取の日南町で生まれ育った清水さんにとって、大田市は縁もゆかりもない土地だった。広島の財団法人に8年勤め、結婚を機に退職。2年ほど夫が勤務する松江市に住んでいた。移住のきっかけは夫の転職。歴史的な建物や町並みの保存・研究に携わる仕事を志していた夫が、大田市役所の文化財建造物の専門職員に採用されたのだ。
 大田市に移住後、2人の子どもに恵まれた。清水さんは育児や生活を楽しみながら胸に秘めた思いがあった。「私ができることを見つけたい」「文章を書く仕事がしたい」「たくさんの人と関われる仕事がしたい」―。そんな時、知人からトレンダーズの説明会の情報を聞き、さっそく足を運んだ。トレンダーズは東京に本社を置き、インフルエンサーやデジタル広告などを用いたプロモーション、トレンドリサーチ、WEBサイトの制作、企業のSNSの運営など幅広い事業を展開している。大田市の企業誘致活動により2019年に島根オフィスが開設され、スタッフを現地採用することになったのだ。「説明会に関西から女性の責任者が来ていたんです。第一線で働きながら家庭も大切にしていて、私の理想と重なりました」
 清水さんにとっては初めて飛び込む世界だったが、研修でWEBライティングなどのノウハウを習得。キャリア情報系WEBメディアなどを手がけることになった。開設当初は3人だったスタッフは年々増え、現在は9人(取材日時点)に。初期メンバーである清水さんは皆から「たえさん」と呼ばれ、頼られ、今や業務や会議を主導するリーダー的存在になっている。新しいメディアの立ち上げにも関わり、毎日が充実している。

【プリザーブドフラワーbotan】 家族とよく遊びに行く海岸の店。住まいを彩る花を選ぶ時間も、清水さんにとっては大切な時間だ。

ライフスタイルを大切にしてもらえる
ステージ

 トレンダーズはWEB会議システムやチャットワークを活用し、東京と島根のメンバーが連携して業務を進めている。離れていても何でも相談でき、アイデアの共有もスムーズ。やりたい仕事に挑戦させてもらえる風通しの良さもある。「『地方だからできない仕事がある』とは言い訳できない環境ですね」と清水さんからはシビアな言葉も出るが、それはプライドと責任を持って仕事をしている証だ。
 クオリティ面では高い水準を求められるが、働き方は柔軟性に富んでいる。幼い子どもがいるメンバーが子どもの体調不良などで家から出にくい場合は在宅ワークが選択できる。子育て、介護などのライフイベントにも柔軟に対応し、個々人の事情をふまえた働き方ができる。社内には「オンラインコミュニケーション補助」という支援金制度も。東京メンバーとも気軽にオンラインでランチやコーヒータイムの会話を楽しむきっかけとなっている。また、インカムやルーターといった必需品を購入し在宅ワーク環境を整備できる。「ネットが繋がればどこでも仕事ができ、家庭とバランスが取りやすいです。プライベートが満たされ健康でなければ、仕事に力を注げません。トレンダーズはそういうことを理解し、社員の生き方を大事にしてくれます」
 仕事の選び方や働き方についての記事を執筆している清水さん。人生の岐路に立つ人を導き次のステージへと背中を押すのが目標であり、理想だと語る。「私は結婚を機に前職を辞めました。今なら、仕事も家庭も大切にする方法がわかる。あの時の私が選べなかった選択肢を、今悩んでいる誰かに提示できればと思います」

 大田市にオフィスを持つ企業ならではの展開も。新型コロナの影響を受けた地元飲食店の応援企画として立ち上がったWEBサイト「 maina! 美味な(まいな)大田」では、トレンダーズが得意とするSNSマーケティングの知見を活かし、主にSNS上での情報発信の仕方などをアドバイス。市役所と連携し、地元の商店や事業所、団体を対象にInstagramのセミナーも実施している。「アカウントを取得してからの投稿作成、ハッシュタグの効果的な付け方などをお伝えしています。『フォロワーが増えたよ』『新しいお客さんが来てくれた』と言ってもらえると嬉しいです」
 今後は観光PRにも関わっていきたいそうだ。「トレンダーズのインサイト分析(消費者が意識していない行動動機の分析)は他の会社にはない強み。大田市に人を呼び込む発信方法、経済が回る方法はないか…今まさに、スタッフみんなでアイデアを出しているところ。今後は地域に出て役に立てることを探し、人に会い、何ができる会社なのかを広めていきたいです」

【大田の町】 郊外はのどかな風景が広がるが、中心部には大型商業施設などが進出し利便性が高まっている。高速道路も開通し、出雲方面との行き来もスムーズに。

〝普通の田舎〟で見えてきた、
本当に欲しいもの

 「広島で働いていた頃はとにかく便利でした。カフェがどこにでもある、コンビニが徒歩3分のところにある…、そんな環境に流されていた自覚があります」と清水さんはかつての自身を語る。「講演会や勉強会も、美術館などの文化的なスポットもたくさんあった。離れるまで気づかなかったんです。モノや情報があふれる中でアンテナが鈍っていたのかもしれません」。大田市に住み始めてから、自然や食、文化に関心を強め、自分らしい暮らしを開拓するようになった。「大田は〝田舎すぎない普通の田舎〟。海も山もあって、生活に困らない程度の町で、でも工夫しないとちょっと不便。だから本当に必要なものへアンテナが立ち始めたのかもしれない」
 遊園地のようなレジャー施設はないが、周囲を見渡せば遊び場が海に山に広がっている。お気に入りは三瓶山の西の原。子どもたちと一緒に草原でボールを追いかけ、虫を探す。自宅から車で10分ほどの海岸でシーグラスを集めて工作することもある。3歳の長男は、祭りなどで石見神楽を観るうちに自然と所作を真似し、6歳の長女は御囃子の太鼓を打てるようになった。ヒーローごっこをするように神楽ごっこに興じている。親も子も、アンテナを立てて楽しみを見つけるのが上手い。

【大森の町並みを歩く】 自宅から車で20分ほどのエリア。石見銀山が栄えた時代の面影が残り、子どもたちが大好きなベーカリーなどもある。

 休日は季節の幸を求めて直売所へ。「栽培方法にこだわった農家さんも多く、野菜もお米もおいしい。無農薬野菜も手に入りやすいんですよ」。滋味豊かな料理を盛るのは島根・鳥取の器だ。蒸し野菜や塩むすびのようなシンプルな料理も美しく映える。やんちゃ盛りの子がいるがプラスチックの皿は使わず、欠ければ夫が金継ぎで修繕。〝直して使い続ける〟が清水さん夫妻の流儀だ。住まいは縁側のある築50年の空き家を購入。一部を地元の工務店にリフォームしてもらい、あとは住まいながら自分たちなりの家づくりを楽しみたいと考えている。庭ではプランターで野菜を育て、手作りの生ごみ処理器を設置。今年は無農薬の家庭菜園を始めようと、敷地の一角を耕して畑にした。庭木には季節の野鳥が訪れ、昨年はメジロやシジュウカラが巣をつくって楽しませてくれたという。「家も庭も〝実験場〟。私たちの理想や希望を自由に実践できる場所です。何でも自分たちの手で楽しめるからでしょうね。大田に来てからあまりお金を使っていません。自然の中で遊んだり、季節のおいしいものを食べたり、野菜の苗を植えてみたり。そうしているうちに充実した気持ちになれます」
 清水さんは「本能を無視しない生活ができている」と言う。誰かの作った枠に押し込められることなく、自分自身の感性で大切なものを選び、優先できているのだろう。ずっと〝できること〟を探していた清水さん。大田市での暮らしの中に、仕事の中に、自分らしい喜びを見つけつつある。

【ルールブルー石見銀山】 清水さん行きつけの店。島根の器やオーガニック食品など、ライフスタイルにフィットするものが手に入る場所だ。
【温泉津やきものの里】 体験施設で絵付けに挑戦。島根ならではの文化・モノ・自然を楽しむ休日は、清水ファミリーらしい豊かなひと時。

清水 妙子さん
清水妙子さん
鳥取県日南町出身。鳥取県の大学を卒業後、広島県の財団法人に入職。結婚を機に広島から島根県松江市に移住し、夫の転職で大田市へ。トレンダーズ株式会社島根オフィスの開設時に入社し、WEBメディアの執筆などを担当している。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。

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