SCROLL

島根×グローバルIT企業。
世界とも、地域ともつながる
醍醐味がある

奥田周平さんはITエンジニアとして
千葉県からUターンした後、
松江市のモンスターラボ島根開発拠点に入社。
国内外の拠点メンバーとチームを組んで
プロジェクトをけん引するとともに、
地域のエンジニアコミュニティへの参加、
音楽とのかかわり、
そして子どもたちとの時間と、
仕事もプライベートも充実した日々を送る。

結婚、震災を経て、
一度は離れた島根にUターン

 宍道湖の水辺に広がり、城下町として発展してきた県都・松江。奥田さんが働くモンスターラボ島根開発拠点は、大正時代に松江市内で最初に建てられた鉄筋コンクリートビル「出雲ビル」内にオフィスを構えている。
 モンスターラボグループは東京に本社を置くIT企業だ。「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」というミッションのもと、アジアや欧米など世界18ヵ国30都市に拠点を置き、システム開発からDX(デジタルトランスフォーメーション)推進サポート、ビジネス設計など幅広いサービスを提供する。島根開発拠点ではWebサービスやアプリ開発などを担い、奥田さんを含む4人のITエンジニアが在籍。「職場の皆さんは経験豊富で高度なスキルを持っている方ばかり。尊敬する先輩たちです」と、奥田さんは静かな落ち着いた声で、はっきりと話す。

 奥田さんは県東部の雲南市出身だ。松江工業高等専門学校を卒業後、千葉県の電機メーカー系子会社に就職し、ゲーム機関連のアプリの品質管理や検証ソフトウェア開発などに7年従事した。「地元から離れて外の世界に出たかったので、当初はUターンすることは頭になかった」と、実は都会暮らしを続けるつもりでいたことを明かす。その考えが変わったのは結婚後だ。同じ島根出身の奥様は結婚のために千葉に移住したが、地元に強い愛着があった。さらに2011年の東日本大震災がその思いに拍車をかけた。「当時の住まいの近隣にあった工場地帯も被害を受け、妻の地元への思いもより強くなった。ただすぐにUターンというわけにはいかず、仕事である程度経験を積んだ30歳手前がタイミングだと考えました」と震災から2年ほどして徐々に仕事探しをスタート。まずは大手転職サイトで探してみたが、島根県の情報はほとんど載っていなかったという。「島根でこれまでのような仕事はできないかも」と不安を感じていた時、島根県が主催するITエンジニア向けの転職フェアが首都圏で開催されることを知り、さっそく参加。そこで島根にもIT企業があり、予想以上に仕事があることがわかり心配もなくなった。「千葉に7年暮らして、都会の生活や音楽イベントなどエンターテインメントも経験して、向こうの暮らしを十分楽しんだと思えました。島根にも仕事はあるとわかり、自分自身の気持ちも固まった」と2014年にUターンして松江市内にあるIT企業に就職。同じ年、モンスターラボ島根開発拠点が開設された。

島根ならではのエンジニアの
つながりが、
新しい道を拓く

 IT企業というと、東京や大阪などの都市部に集中しているイメージがある。奥田さんも就職に不安を抱えていたが、松江市は2006年からプログラミング言語「Ruby」を軸にしたIT産業振興プロフェクトを推進し、人材育成や企業誘致に取り組んできた。モンスターラボ島根開発拠点の開設もこのプロジェクトが背景にある。グループの代表取締役CEOの鮄川(いながわ)宏樹氏が島根県出身の縁で誘致に手を上げ、行政の支援に加え、街と自然のバランスのとれた環境、活発なITエンジニアコミュニティの存在が決め手となって設立へと結びついた。
 「島根はITの同業者同士の交流が盛んで、Rubyの勉強会などを合同で行っています。都会では社内勉強会はあっても、会社の枠を超えた横のつながりはほとんどなかった」とUターンから間もなく、奥田さんはコミュニティに積極的に参加するようになる。コミュニティでは勉強会だけでなく、県内の学生や各企業のエンジニアが集まるハッカソン(ソフトウェア開発者が、一定期間集中してプログラム開発やサービス考案などの共同作業を行い、その技能やアイデアを競う催し)や、地域イベント向けのアプリ開発なども行われた。その中で島根開発拠点のメンバーと交流を深め、その技術力や発想力の豊かさに驚いたという。「この人たちと同じ会社で働きたい。自分自身も成長できるはず」と、2019年にモンスターラボへの転職を決断した。

【エンジニアの集まり】 合同の勉強会や講演会を通じて、個々のスキルアップだけでなく、ITエンジニア同士の広いネットワークが生まれている。
(写真は過去に開催された島根のエンジニアコミュニティを代表する一枚)

【自転車通勤】 会社は宍道湖に近い白潟地区にあり、天気が良い日は宍道湖の景色や松江の街並みを楽しみながら自転車通勤している。

 モンスターラボグループが扱うプロジェクトは、都市部のクライアントから受ける大規模なものが多い。プロジェクトごとに国内外の拠点とリモートで多国籍チームが組まれ、その中で奥田さんは開発チームのマネジメントやプログラミングなどを担当し、チームを引っ張っている。「国内外の優秀な人材と一緒に働けることはとても刺激になります。国をまたいで技術やノウハウが共有され、スキルアップにもつながる」とグローバル企業ならではの醍醐味を語る。
 プロジェクトの内容は毎回異なり、技術や考え方の幅も広がった。「経験値を重ねたことで発信力も身に付き、自分が見つけた『やりたい仕事』を成立させる道筋をつくれるようになった」と奥田さん。こうした社員発の案件では地域での取り組みも多く、講演会などで社員が講師やパネリストを務めることもあるという。「大きなプロジェクトで最新のテクノロジーに関わることも、地域と関わることも、それぞれに面白味があり、都会ではあまりない経験をさせてもらっています」と充実した表情を見せる。

芯を持って、尊敬する人たちに
胸を張れる自分を目指す

 Uターン後、奥田さん夫妻は2人の男の子に恵まれた。「仕事は自分の裁量次第の部分もあるので、なるべく子どもと一緒に過ごせるようにしている」と父親として家族との時間を大切にする。平日は保育園の送迎やお風呂、天気の良い休日は家族で公園や自然の中に出かけて遊ぶことが多く、毎月それぞれの両親のもとに顔を出す。「松江は身近にある自然や街としての規模、それから人との距離感も近すぎず遠すぎずで自分たちにちょうど良い。両親や親戚も近くにいて子育てを助けてもらえます。都会にいたらこれほど気持ちに余裕を持てなかったかもしれない」と安心感や暮らしやすさを感じている。ただし都会と比べて、地方は教育などの選択肢が限られる場合もあるので「子どもの将来の選択肢を狭めたり、奪ったりしないように一緒にチャレンジや応援をしていきたい」とできる限りのことをしたいと考えている。

【セレクトショップ/objects】 松江市内にある器と生活道具のセレクトショップ「objects(オブジェクツ)」はお気に入りの場所。店主との会話も、店を訪問する楽しみのひとつだ。

 今は子どもとの時間が最優先だが、奥田さん自身はもともと多趣味の人。Uターン後だけでも、山陰の酒蔵や民藝の器の窯元めぐり、ロードバイクやレガッタなどのアウトドアアクティビティなど、さまざまな趣味にチャレンジしている。「島根の生活は穏やかですが、何もしなければ本当に何ごともなく日々が過ぎ去ってしまう。仕事でもプライベートでもなるべく自分から動いて、声をかけられれば得意でなくてもまずは飛び込んでみるようになりました」。もともと好きだった音楽では、それまで音楽イベントなどにお客として参加する側だったのが、ミュージックバーの手伝いをするようになり、さらにイベントの企画・運営にも携わるようになった。「自分が中心になって始めるというより、面白そうだと仲間内で話していくうちに形になっていく感じ。都会と比べてイベントなどの規模や数は少ないですが、音楽を楽しめる場所はちゃんとあります」と、自分にとっての大切な場所や人とこれからも長くかかわっていきたいと話す。
 島根を一度離れた奥田さんの目には、仕事や環境、暮らしなどさまざまな面で新しい魅力が映っているようだ。「松江の人は奥ゆかしいのですが、話してみると芯があって胸に熱いものを秘めている人が多い。職場の人は県外出身でまたタイプは違うのですが、仕事でもプライベートでも周りに尊敬する人が多く、その人たちにダメなところは見せられない。恥ずかしくない自分でありたいです」と自身も熱い思いを抱いている。

【松江フォーゲルパーク】 家族との団らんでは父親の顔を見せる奥田さん。休みの日は近くの公園や松江フォーゲルパークなどの遊び場に出かけ、子どもたちとの時間を育んでいる。

奥田 周平さん
奥田周平さん
島根県雲南市出身。松江工業高等専門学校を2007年に卒業し、千葉県の電機メーカー系子会社に新卒入社。2014年に夫婦でUターン。2019年にモンスターラボ島根開発拠点に入社し、WEBシステムの開発などを行う。プライベートでは2児の父。 ※掲載記事は取材時点の情報となります。

他のストーリーをもっと見る

一覧に戻る

Recommend

島根での暮らしに興味があるあなたへ 暮らしに関わるもっと具体的な情報は こちらから。

くらしまねっと しまねで暮らす、働く。

※くらしまねっとは、島根県の求人情報をまとめて検索できる県内最大級の求人件数を掲載する移住情報ポータルサイトです。